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町内会の指示に従い

ページ番号:0002117 更新日:2023年2月1日更新 印刷ページ表示

園田松枝さん(諫早市立石町)

8月9日
朝から松やに採取作業のため諫早市郊外、駄森の山に行く。松やに採取作業に夢中になっていると、西南の方に飛行機の爆音が聞こえ、その方向を見ると「ピカッ」と光るとすぐに「ドン」と大きな音がして瞬間その場に伏せてしまった。もうすぐお昼になるからぼつぼつ山を降りようとすると、空は黄金色になり、次第に空から雨が降りそうなので急いで帰る。
夕方になると町内会長から長崎市に新型爆弾が落ちて、長崎は全滅、死傷者が多く、諫早に続々死傷者が運ばれるので明日は町内全部看護に出るように町内会長より伝えられた。
8月10日
諫早国民学校に行く。小学校の収容所では、ムシロなど敷いて寝かせてあり、足の踏場もない。何とも言えない臭いがする。あちこちから「水…」、「水を…」と叫ぶ。驚いていると次から次へと被爆者が運ばれてくる。顔は真黒、シャツはちぎれて、触ると皮膚が破れ、手にべたついて気持ちが悪い。水をやったり、便所などの世話をする。食事は粥食で、さかづきにすくって口に流し込む。初めての看護なので要領がわからず疲れて家に帰る。
8月11日
町内会長より明日12日は永昌の海軍病院に行くように言われた。
8月12日
朝8時頃、刑務所前集合。上野町の人と合流して海軍病院に行く。収容所の入口で死体を男の人が運んで行く。先刻息を引取ったという。合掌して冥福を祈る。収容所に入ると臭気がプンプン異様な気持ちである。「水…水」とあちこちから叫ぶ。35歳位の女の人が排便を訴える。3人がかりで用を足させる。こちらでは40歳位の男の人が、顔は真黒で焼けただれて水を欲しがる。口を開けるのがやっとで水を流しこむ。寝返りを訴える人が多いので手伝ってやる。
このような人の看護だから相当に疲れて、家に帰っても何もする気にならなかったように記憶している。
8月13日
14日は諫早中学校に行くように町内会長より言われた。
8月14日
8時頃、刑務所前集合。諫早中学校(旧制)に行く。この収容所は重傷患者が多く、収容所の中は相変わらず臭気が強い。収容者のほとんどが、背中、顔等ただれ、背中等真黒になっていた。子ども2人と母親の姿が目についた。母親は重傷の身もいとわず、苦しそうにして子どもの世話をしている。かわいそうに思い、排便、水、食事等の時に気を配ってやる。今日は特に傷の痛みを訴える人が多くなったようだ。よく見ると傷にウジ虫ができて、傷跡に深く入り込んで、紙で取り除くことも困難なくらいで口では言えないくらいでした。
重傷の患者は、海軍病院に移すことになったので、担架に乗せるのを男の看護人に手伝う。
8月15日
明16日は夜、諫早商業学校に行くように、町内会長より指令があった。
8月16日
午後8時より翌朝まで諫早商業学校に行く。ずいぶん慣れたとはいえ、蒸し暑さと悪臭で息がつまりそう。夜間のためか男の人が多く、私たちはただ水を欲しがる人に水を飲ませたり、団扇で扇いでやったり用便の手伝いをする。
夜が明けて家に帰る。