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山姥(森山地域)

ページ番号:0007902 更新日:2023年2月6日更新 印刷ページ表示

山姥

昔、あるところに、お母さんと三人の幼い子どもたちが暮らしていました。ある日、お母さんが庄屋さんのところへ米つきに行った帰り、土産の握り飯を持って山道を歩いていると山姥が追いかけてきます。そして、「握り飯をやれ」と言うとみーんな食べてしまいました。それでもまだ足りなかったのか、とうとうお母さんまで食べてしまいました。そうして山姥はお母さんになりすますと、子どもたちが待っている家へやってきました。山姥は「今帰ったばい」と外から声をかけます。それを聞いた一番年かさの男の子が「おっかさんの声じゃなか」と言いました。山姥はあわてて声をつくりました。男の子は、今度は戸を少しあけて「手ば見せてくれろ」と言います。山姥が手を出すと、がさがさしていました。「おっかさんなこがん手はしとらん」。そこで山姥は白い泥を手に塗り、ようやく家に入ることができました。
その夜、子どもたちが寝ていると、ぶりぶりと音がします。お母さんが何やら食べているのです。男の子が「なんば噛みよっと」ときくと、「庄屋さんのとこでもろた漬物」と言うので、「おれにもかせやい(食べさせて)」とひとつもらいました。それは、よく見ると一番下の弟の指です。
さあたいへん、やまんばだ~。
男の子はすぐ下の弟を起こすと、小便にと外へ出ました。そうして一目散に逃げます。山姥は子どもたちを待っていましたが、あんまり帰ってこないので外へ出てみると、どこにもいません。すぐに「あいやどこさんいたろか」と追いかけます。子どもたちは走って、走って川のほとりまできました。川は大きくて渡れません。ところが、ちょうどそばに木があったので、それに登りました。
山姥が追いついてきました。川の中に子どもたちの影が見えます。「よーしっ」と山姥は家から籾卸(籾とごみをえり分けるざる)を持ってくると、川の中の影をすくおうとします。でも「あらちょんもったあらちょんもった」とちっともすくえません。それを見ていた弟は、くすくす笑ってしまいました。
山姥は声に気づいて、とうとう木の上にいる子どもたちを見つけると登ってきます。もう追いつかれそうです。子どもたちは「天の神さん助けてくださいみぞか(かわいい)ないば金の鎖をにっか(憎い)ないば縄の鎖を」とお願いしました。すると天から金の鎖がおりてきたので、子どもたちはそれにすがって(つかまって)するすると天へ上っていきました。それを見ていた山姥も「みぞかないば金の鎖面にっかないば縄の鎖」とお願いすると、縄の鎖が降りてきました。山姥はそれにすがって天へと上るのですが、途中、縄はぷつんと切れてまっさかさまに落ちてしまいました。落ちたところは黍畑で、黍の根が赤いのは、この時の山姥の血がついたものだそうです。そいばっか。

諫早史談会 川内 知子
絵:中路 英恵さん

※山姥は、女の姿をした山の妖怪です。山姥の昔話は、諫早市内各地に伝えられています。今回は、その中でも森山地域に伝えられているお話を紹介しています。
※「そいばっか」は昔話のおしまいの決まり文句のひとつです。