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うたでめでたし初詣(松里地区)

ページ番号:0007887 更新日:2023年2月6日更新 印刷ページ表示

うためでたし初詣

今回は、おじいさんのトンチのきいた和歌(うた)がおもしろいお話です。はじまり、はじまり……。

むかしね、やかまし屋のジーヤンがいました。すーぐガミガミと怒るジーヤンでした。
ある年の晩(大みそか)、アンネ(女中さん)が家中を掃除した後、ぞうきんを床の間に置き忘れてしまいました。
元日になりました。ジーヤンが床の間にお参りに行くと、そのぞうきんが置いてあったものですから、もう気色悪げに「こけぞうきんをだがええたか(ここにぞうきんを誰が置いたのか)」とアンネを叱ります。アンネはジーヤンにあやまるのですが、「正月早々から」と言って許してくれません。
そこへ隣のジーヤンがやってきました。とってもトンチのよいジーヤンで「ないて元日早々怒りよいますなた(なぜ元日早々そんなに怒っているのですか)」とたずねます。やかまし屋のジーヤンは「こいが床の間にぞうきんばいっちょいとっとたいえ(これが床の間にぞうきんを置き忘れていたのですよ)、元日早々」
すると隣のジーヤンは「そらええこと」と言うではありませんか。ジーヤンが「なしてかん」と聞くと、「床の間に 忘れしものは 倉と金 あっち福福 こっち福福」(床の間に忘れたものは「倉(ぞう)」と「金(きん)」。あちらもこちらも福(拭く)がきます)とうたを詠み「あんたがたは今年は銭ばっかいたい」と言うものですから、もうやかまし屋のジーヤンは「そうたいね、うん、ほんなごて、よかことたい」といっぺんに機嫌がよくなりました。
そこでふたりはにこにこと新年のあいさつをかわし、お神酒をいただき、それからそろって初詣に行くことにしました。
ところが戸口を出ると、門松にヘコ(ふんどし)が掛かっていました。それを見たやかまし屋のジーヤンは、またまた はらかいて「ヘコをこがんとこれへえて(干して)!門松にヘコば干すてあんもんか!」とかんかんに怒ります。すると隣のジーヤンがちょっと考えて「そいはよかことたあ」となだめます。
「なし(どうして)、ヘコを門松に干すてあんもんですか」とせっかくよくなった気分もいっぺんに台無しです。
隣のジーヤンは「よかうた詠みのあっとの」と言って「門松に 掛けしものは 金包み さぞや今年も まわしよからん」(門松に掛けているのは金包み。さぞ今年も金のまわりがよいことでしょう)と詠みました。やかまし屋のジーヤンは「ふーん、ほんなごと」と、もうたいそう感心してしまいました。
そうしてすっかり気分がよくなったジーヤンは隣のジーヤンと初詣に行き、めでたく正月を迎えました。
そいばっか。

諫早史談会 川内 知子
絵:中路 英恵さん

※「そいばっか」は昔話のおしまいの決まり文句のひとつです。