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神さんになったおふじ(久山地区ほか)

ページ番号:0007871 更新日:2023年2月6日更新 印刷ページ表示

神さんになったおふじ

今回は、「正直の頭(こうべ)に神宿る」(正直な人には神様のご加護がありますよ)というお話です。はじまり、はじまり……。

むかしね、ある金持ちさんの家におふじというアンネ(女中さん)がおりました。
そのおふじが、ご飯を食べるとき、どうしても仲間のみんなといっしょに食べません。そうして、みーんな寝てしまってから、一人だけでご飯を食べていました。みんなは「こりゃおかしなもんにゃ」と思って「あんたはなしご飯ないっしょに食べず、晩遅うに食ぶんね」ときいてみました。おふじは「みんなが食べさしの残いのあっとのもったいなかけん、よかとこばとっておじやにして食ぶっ」といいます。それをきいた旦那さんは「おとーろしか、まあだ子どんがそぎゃんまで思うとは、こりゃ普通のたましいじゃなか」と感心していました。
あるとき、「おふじー、今夜はねこん種火ば消やさんごとしとかんばばいね」といいつけました。ところがおふじはついつい眠ってしまいました。夜中、目をさますと、種火が消えてしまっています。おふじは「種火ののうなっとっとのどがんしゅいろ、旦那さんにどがんいえばよかいろ」と困りはてました。
なかなか思案が浮かばず、もうどうしようかと外へ出てみると、むこうからヒカーヒカーと灯りをつけて誰かがやってきます。おふじはそれを見ると、種火をもらおうと近くへ来るのを待っていました。近づいてきたのは葬式の行列でした。おふじは「もうしょんなか、どがん火でんもらわんば」と種火をわけてくれるようにたのみました。行列の人は「くるっとはよかいどん(あげるのはよいが)、種火ばもらえば、こん死人ももろてくれんば」といいました。おふじはどうしても種火がほしかったので、もう仕方がなく「あいば(それなら)もらおう」と死人ももらうこととしました。棺桶は見つからないように庭の隅にゴザをかぶせておきます。
翌朝、旦那さんがやってきました。庭を見ると「おふじー、ありゃなんな」とたずねます。おふじがだまっていると「おふじー、きらきらしよっとの、あいはなんな」とまたきいてきました。仕方なく「あいはお棺です」といって、種火を消してしまったことから、種火をもらうために死人までもらったことを話しました。
すると旦那さんは「あいば開けてみろ、そん棺ば」と、おふじに棺桶を開けさせました。
開けてみると、なんと死人ではなくて大判小判がきらきらといっぱい入っていました。旦那さんはそれを見て「こりゃお前に神さんのさずけとらすと、こりゃお前のもん」とおふじにいいました。ところがおふじは「そいはいらんけん、お堂のほしか」というので旦那さんはお堂を造ってやりました。
お堂ができました。旦那さんが「おふじー、お堂のでけたとのはよ行たてみろ」というので「はーい」といってお堂の中へ入るとそのまま神さんになってしまいました。旦那さんは「おふじはやっぱい普通のもんじゃなかったとね」と手を合わせました。
そいばっか。
諫早史談会 川内 知子
絵:中路 英恵さん